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2009年7月号

vol. 028

ゴミ溜めからの星空

~ゴミ溜めから見上げた星空はいつも静かで澄み渡っている~

あっちこっちで火が吹いている。こちらを鎮火すれば、またあちら。
あちらを鎮火すれば、またこちら。何事もない日は一日もない。
だが、そんな時にフッと見上げた星空は、なぜか必ず澄み渡っている。

30年近くも働いていると、日々、色んな事がある。
トラブルだけではない。
目の前で誰かが助けを呼んでいる。
傍らで誰かがシクシクと泣いている。
まったく同時に複数の「難題」が飛び込んでくる。

こんな経験は、
マネージャーを経験したことのある人ならば日常茶飯事だ。
まるで戦争のようなこの日常は、
ある種、宿命のようにも思えてくるはずだ。

日々の戦争とはこんな感じだ。

携帯電話で話をしている最中に、目の前の固定電話が鳴り始める。
「ああ、どうしよう…」と思っている矢先、
台所の天ぷら油からモクモクと煙が出始めた。
「たいへんだ!」と思っている矢先、
隣の部屋で寝ていた赤ん坊が、割れるように泣き始めた。
「どうしたんだ!」と両耳に電話機をつけたまま駆けつけたら、
後ろで台所の火災報知器が大音量で鳴り始める。
そんな時、玄関のインターフォンが連呼をし始める。
「誰だ!こんな時に!」と思ってると、
テレビから「間もなく大きな揺れが来ます!」と地震警報が流れ始める。
そんな時、目の前に座っている人から、
「ねえ、聞いてるの?」と詰め寄られた。
まあ、そんな状況である。

イライラもする。
全てを投げ出してしまいたくもなる。
ああ、もうこれで終わりか…と開き直った瞬間、
すべての音がピタリと止むのだ。

昔、面白いことを言う男がいた。
「周りで色んなことが起こり、もうムチャクチャになってきて、
それが、ある限度を超えた瞬間、時計が停止するんだ」
と言うのだ。
その時は「はいはい」と聞き流していたのだが、
どうやらそれは当たっている気がしてきた。

「時計が止まっている間に何をするんだ?」
「星空を眺めるんだ」
「は?」
「見つからなかった糸口が降りてくる」
「はあ?」
「待ってれば降りてくる」
「なんで?」
「時計が止まってるから」

ペットボトル、食べ残しのお弁当、丸めたティッシュ、ミカンの皮、
お菓子の箱、シュレッダーの紙くず、破れた靴下…。
ゴミ溜めに首まで浸かっている。
こんな姿はとてもお客様には見せられない。

手も足も動かない。
抜けようと暴れてもビクともしない。
動けばズブズブと沈んでいく。
太陽に照らされて、ゴミから異様な匂いが立ち込める。
たまらなく臭い。
もうダメか…。
そう思って目を閉じる。

どれくらい時間が経っただろうか。
目を開けると、すっかり真夜中だ。
喧騒の中のゴミ溜めだったが、今は静かに何もかもが停まっている。
昼間は聞こえなかった「虫の声」が聞こえる。
身動きできないほどどっぷり浸かった首をもたげたら、
ナント、そこには満天の星が見えたのだ。

憎悪が渦巻き、酒池肉林がごとく欲望のまとわりつく現世。
その汚物の溜まったゴミ溜めから見上げた星空の、
ナント美しく静かで清廉なことだろう。
数年前に見た星とまったく位置を変えていない。

「これか…」

生暖かいゴミ溜めが、何となく心地よく、
その清廉な星空とのアンバランスさが、また心地よく、
「ゴミ溜めも悪くないか…」と一人ごちる。

10の難題を同時に解決する方法など降りてはこない。
だが、10の難題を、
難題だと思わせない何かが降りてくるのだ。
「なんくるないさ~」と、
(沖縄方言で『何とかなるさ』の意味)
耳を澄ませばそう聞こえてくるのである。

毎夜、事務所のベランダから空を見上げる。
しかし、どんより曇って、星などどこにも見えない。
東京や大阪ではネオンも邪魔で、
目を凝らしても星など一つも見えないのだ。
だが、ゴミ溜めからは、
なぜか、必ず澄み渡った星空が見える。

不思議なことに、
ごくごく普通の難題ごときでは星空は見えない。
目の前の難題を、
ぎゃーぎゃー言いながら消していくしかないのだが、
星空を見上げることさえ忘れてしまった極限で、
その瞬間は訪れるのである。

星を見ると、忘れていた「何か」を思い出す。
もつれていた毛糸玉が、
なぜか不思議と解けていくのである。

お客様の所へは、
清清しいスーツ姿で颯爽と訪ねたい。

ごみ溜めからの星空は、なぜか必ず澄み渡っている。

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 社長 谷洋の独り言ブログ 日々是好日