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2015年6月号

vol. 099

なぜハワイに向かうのかを公表せよ

~経営方針をすべての社員にまで届ければ、その会社は見る見ると強くなっていく~

真東に向かうはずの船が今、真南に舵を切り始めた。
だが、船底にいる我々三等機関士には、その理由は伝わってはこない。
我々は寡黙に、目の前にある自分の職務をまっとうするだけだ。

これが明治期に生まれた「日本海軍の強さ」の所以である。
乗組員の一人ひとりが、その作戦の中身まで知らずとも構わない。
いやむしろ、組織の中にある個々個人は、
作戦の最終目的を知らぬ方が強くなれる、という考え方である。
船底の三等機関士にとっては、行き先など知らぬ方が良いのである。
これは歴史が証明した一つの正論となっている。

実はこの考え方、明治維新に、薩摩藩が持ち込んだ思想である。
命令に、その理由を問い質すことは「恥ずべき行為」なのだ。
上意には黙してそれを疑わず、ただ服従するのみ、と言う。
儒教的な精神ではない。むしろ朱子学に近い。

これは「死の恐怖」を振り払わんがために生まれた教えであり、
何でも理由を聞きたがるアングロサクソンには理解はできないだろう。
日清戦争で敗れた清国軍は、
自軍の少しの劣勢が見えたとき、我れ先にと敵前から逃亡をした。
だが日本海軍は、死ぬ瞬間まで、死ぬ理由さえ知らずに死んでいったのだ。
これこそが、日本海軍の比類なき強さだった。

さて、今回のテーマは「強いチームとは何ぞや?」である。
これは、私にとっては数十年に亘る、永遠の経営課題にもなっている。
が、答えはまだ見つかっていない。
ただ一時期、この比類なき日本海軍こそが、
目指すべき理想のチーム像ではないか、と信じていた時期がある。

チームが強くあるためには、次の3つの条件が必要だと言われている。
1つ目に、チームに「目的」があることだ。
「目的」のないチームは、単なる烏合の衆だ。
全員がバラバラに動いては、ベクトルは四散し、チーム力は弱まるだろう。
2つ目は、チームメンバー全員に、
それぞれ「違った役割」が与えられていることだと言われている。
メンバーそれぞれの「違う役割」は、足し算以上の力を産み出している。
これに疑う余地はない。
そして3つ目は、チームを引っ張る「リーダーシップ」の存在だ。
これも疑う余地はないだろう。

そしてこれらに加え「三等機関士に目的地を知らせない」という教えこそ、
「チーム強靭化の4つ目の条件」になるはずだと信じていた。

ナポレオンが有名な諺を残している。
「1頭のライオンに率いられた羊の群れは、1匹の羊に率いられた
ライオンの群れに勝る」と。
日本海軍の強さの定義に似ている。
要は、末端の兵たるものは、指揮官の言うことを死ぬまで信じ、
自らの役割だけをまっとうする「服従」こそが、チームの強さだと言うのだ。
果たしてナポレオンは、破竹の勝利を得ていく。

また、ある外資系のトップ営業が、講演会で次のようにも述べていた。
「営業マンに余計なことを吹き込むな。とにかく考えさせてはならん!」と。
「営業マンには、決った売り文句で、相手が買うまで説得をさせろ!」と。
要するに、営業マンはロボットのごとく「自らの役割に盲目的であれ!」と。

伸びる企業のほとんどが、この妄目的な営業スタイルを信仰している。
つまりは、三等機関士にも、一匹の羊にも、一介の営業マンにも、
とにかく、目の前の役割を盲目的にまっとうさせることのみを厳命し、
とにかく、敵前逃亡させない仕掛けこそが、強いチームの必須条件なのだ。
なるほど。その通りだと思う。これで答えは見つかった。と思っていた。

だがここ数年、何やら「ヘンな運動」が日本企業の中で起こり始めていると聞く。
バブル後の「失われた20年」を経験した日本企業は、
それまでの日本海軍の盲目的な強さを、とうとう疑い始めたのである。
そう。盲目的服従を「是」としないと言い始めたのだ。

近年、自社のすべての社員やパート社員に至るまで、つまり三等機関士にまで、
経営方針を理解させようとする活動が、屈指の大企業を中心に起こりつつある。
その活動を「ウェイ活動」と呼ぶ。

莫大なコストをかけてでも、末端の社員に至るまで経営方針を理解させる。
ただ伝えるだけではない。とことん理解させ、経営方針を血肉に変えるのだ。
発端は「世界のトヨタ」から始まった。
今、花王、リコー、コマツと、次々とビッグネームにこの活動が波及している。

「ウェイ活動」は、日本海軍の「伝えない強さ」の逆説である。
同じ魂を持つ日本人が、何を血迷ったのか。
だがこれは「どうすればもっと強くなれるか」を考え抜いた挙句の果断なのだ。
この結論、私にとっても衝撃以外の何モノでもなかったが、
なぜか、少しずつ、少しずつ、腑に落ちてきている。なるほどと。

先頭の話に戻ろう。
我々は日本を出航し、真東に進み、アメリカ本土に向かっていた。
だが、その船がいきなり真南に舵を切った。
「なんで?」
我々三等機関士は、その理由を知りたくなった。
そして甲板員や炊事員に至るまで、すべての乗組員が甲板に集められ、
船長から説明を聞くこととなった。

「我々はアメリカ本土に向かっていた。だが、天候不良で日程が狂い、
予定より航行日数が延びてしまった。そのため、食料、水、燃料を補給しなければ、
航行を続けられないことが判明した。我々は一旦、真南に向かいハワイに寄港する。
そこで食料と水と燃料を補給し、改めて東に向かうこととする」

この船長の説明には、何とも言えぬ気持ち良さがある。
長い航海も、赤道に向かう船底も暑さも苦にはならないだろう。
この説明によって、自らに与えられた職務は1mmも変わることはないが、
目の前の職務に、目一杯の力を注げる気がする。
例えそれが、死地に向かう航海であってもだ。

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 社長 谷洋の独り言ブログ 日々是好日