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2017年02月号

vol. 119

1枚きりのスイスチーズ

~地雷を探しながら歩くより、地雷など気にせず歩き、踏んでしまった方が「得」という戦略~

我が社は、未収金の督促をしない。
簡単に言えば、お金を払ってくれないお客があっても「あぁそう」とあきらめるのだ。
督促にかかるコストより、サッサとあきらめるコストの方が安い、と気付いたからだ。

突然だが、皆さんは「スイスチーズ」を食したことはあるだろうか。
通常、我々日本人が食べるチーズは、中に空洞があるなんてことはないのだが、このスイスチーズには中に丸い空洞がいくつもある。
そう。昔、「トムとジェリー」というアメリカ漫画に出てきた、あの「穴あきチーズ」がそれである。
ただしここで、チーズについての薀蓄を述べるつもりはない。今回は、この「スイスチーズ」になぞらえた、ある理論を紹介したい。
「経営における完璧なリスクヘッジ(危機回避)」を説いた「スイスチーズ理論」がそれである。

この「穴あきチーズ」をスライスしたとき、空いている「穴」が「リスク」だとしよう。
そして、この「穴」を通して、向こう側が見えれば「リスクの多い状態」だとしたとき、
「穴」がまったく無ければ、向こう側は見えないワケで、これは「リスクの無い状態」と見なされる。
さてでは、どうやってリスク(穴)を失くせるのかを考えてみよう。

極力、チーズを作る工程で「穴」を少なくすればリスクは減っていくだろう。そう。1つの策は「穴を少なくする」ことである。
だが残念ながら「スイスチーズ」には、必ず多くの穴が空くそうだ。となれば、これは完璧なリスクヘッジ策とはならない。
ならばどうするか。実はグッドアイデアがある。
このスライスした「スイスチーズ」を、何重にも重ねればいいのだ。
そうすれば、1枚1枚のチーズの「穴」がバラバラなら、重ねる枚数が多ければ多いほど、向こう側が見通せる「穴」は無くなっていくだろう。

要するに、リスクを完璧に防ぐには、1つの予防策ではダメで、何重にも予防策を講じることによって初めて、リスクはゼロになるのだ。
これが「スイスチーズ理論」と呼ばれている考え方だ。
研究棟へのスパイの侵入を防ぐには、守衛、監視カメラ、セキュリティカード、指紋認識、暗証番号など、何重ものゲートを用意する。
世界に名立たる企業の多くは、この理論の下、リスクヘッジに膨大なコストをかけ、完璧な危機回避を担保しているのである。

さて、この理論では「穴」を少なくする努力は所詮はムダであり、そんなことで、完璧な危機回避などできっこないと決め付けている。
私も、この理論に出会ったとき、当然それを1mmも疑うことなく「その通り」と納得したものである。
だが本当にそうなのだろうか。
私は自分の会社を興すとき、フっとこの「スイスチーズ理論」を疑い始めたのである。

ときに大企業は、100円の利益を守る為に、愚かにも200円をリスクヘッジ策に投じているときがある。
それは、長期的判断でも、巨視的判断でも、総合的判断でもない。
とにかく「危機回避をしとけ!と言われたからやります」的な「公務員発想のタマモノ」なのだと思う。
だがこれでは本質を見誤ってしまう。ホントはどっちが「得」なのかをよくよく考えるべきなのだ。

その説明としては、少しズレているかもしれないが、こんな感じだ。
「1つのウソがバレないようにするために、別の20のウソをつかなければならない」という言葉がある。
だから「ウソをついてはいけない」と教えているのだが、中華思想に、こんな教えもある。
「ウソがバレたときの不利益よりも、20のウソで得られる利益の方が大きいなら、ウソをつくほうがいい」と。
これって意外と正しい気がする。
そこで私は、会社を興すとき、「リスクヘッジをやめてみるか…」と考えた始めた。

例えば「与信審査」。企業は、新しい顧客との取引きの前に、まず「与信審査」という手続きを採る。
「与信審査」とは、その顧客と取引きをしても「ちゃんとお金を払ってくれるかどうか」を調べるリスクヘッジ策の一つで、
企業によってその審査の深さは様々だが、審査自体は、どんな会社でも実践している当たり前の手続きだ。

だが我が社は、その、当たり前の「与信審査」を一切しないことにした。
だって、いくら与信審査をしたところで、焦げ付くときは、ちゃんと焦げ付いている、なんてシーンを山ほども見てきたからであり、
取りっぱぐれが無いように「前金」を要求し、取引自体を断られるマヌケな会社も、山ほども見てきたからなのだが、
何よりも、与信審査に「コスト」がかかるのがイヤだったのだ。

ではもし、お客様が、代金を払ってくれなかったときはどうするのか?
簡単だ。あきらめればいい。
1回だけは電話で事情を聞き「払ってよ」と督促もするが、それで払ってくれなければ、サービスを止めて、もう電話さえしない。
取り損ねた1ヶ月分~2ヶ月分のサービス代金は、その瞬間、あきらめることにした。

もしアナタが営業マンなら、よく分かると思うが、金を払わない客に金を払わせる労力って、実にハンパじゃない。
何度も何度も足を運び、その人件費も交通費もバカにはならないのだ。
そもそも、そんなヤクザな客に付き合うこと自体、ムダな行為だと思っている。
従ってそんな客とは、サッサと縁を切る方が「得」だろうと決めたのである。

ただし、我が社の1取引の額は、多くて20万程度。これは「あきらめられる額」だと言ってもいいだろう。
片や、大企業や中堅企業の扱う額は、何百万や何千万というのもザラだ。これは「簡単にはあきらめられない額」のはずだ。
だが我々は、「少額だからあきらめられる」のではなく、
我々はそもそも、会社を作った時点で「あきらめてもいい額」を「取引額の上限」に定めたのである。
そう。我々は、先に「あきらめること」を決め、その上で「我が社の料金体系」を、後から決めたのである。

私が「やらないでおこう」と決めた「リスクヘッジ」はまだまだある。
我が社は、IT技術者を、ユーザー側にオンデマンドで派遣をする「IT業務アウトソーソング業」である。
そのIT技術者は、ウチの社員ではない。SOHOと呼ばれる個人事業主たちだ。
現場で仕事をするのはそのSOHOたちで、我々は極端に言えば、何もしない。
なので度々、SOHOたちはユーザーから「りんくる社を飛ばして直接やらない?」と誘われるケースがあるのだ。

本来ならこれを防がなくてはならない。SOHOがユーザーと直接取引をしてしまったら、我々はメシのタネを引き抜かれて大損害となる。
だが我々は、やはり、何もしない。
「やりたきゃどうぞ」とまでは言わないが、「しないでね」とも言わない。
我々の抑止力はただ1つ。「性善説」だ。裏切らないだろうと信じている。それだけだ。
裏切りを見張るには、莫大な「コスト」がかかるのだ。
私のこれまでの経験で得た「裏切られる確率」を考えたとき、これは「何もしない方が得だ」と私は見たのだ。

他にもある。例えば今、世間で最もうるさい「個人情報漏洩のリスクヘッジ」もその1つだ。
「個人情報」を守備するコストと、それが漏れて、社会的制裁を受けたり、損害賠償を強いられるコストを比較してみるワケだ。
だが、情報漏洩の損害額は、一般的にはウン千万円もの金額にもなったりもするワケで、これは単なる金額比較だけではなさそうだ。
個人情報が漏れる確率、それが社会問題となる確率、それが取引先で大騒ぎとなる確率、無策がバレる確率、などなどを踏まえれば、
大きな声では言えないが、今のところ、私のヘソクリ勘定では、やはり「何もしない方が得」と見ている。
まぁそれ以前に「個人情報を扱う会社とは仕事をしない」をモットーにしているのだが…。

「あきらめてもいい単価」「性善説」「起こりえない損害賠償の確率」などなど、
こういったアイテムが、我が社の、無謀とも言える「1枚きりのスイスチーズ」を成立させている。
だが正直なところ、これまで何度か、涙が出そうなほどの「リスクダメージ」を食らったこともある。
だが意地もあるのだ。
何でもカンでも「リスクヘッジ尊し」とする、現代の社会通念に対する、これは「ささやかなレジスタンス」でもあるのだ。

この「スイスチーズ理論」、よくよく考えられた素晴らしい理論だと思う。
だが、守るべきものの価値と、それを守るためのコストが逆転してしまえば、これは本末転倒ではないだろうか。
営利を求める企業であれば、「何もしない」という対策も、リスクヘッジ策の選択肢に入れるべきだと思うのだが、どうだろう。

なんてエラそうなことを言ってるが、
要するに私は、リスクヘッジが面倒クサイのだ(笑)。

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