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2017年09月号

vol. 126

shellという単語を知ってますか?

~ビジネス界を泳ぎ切るのに最も大事なモノは学歴でも博学でもない。それは「特別な個性」に他ならない~

あなたは「shell」という単語を知っているだろうか。
私が高校時代に出会った英単語のうち、一番印象に残った英単語がこの「shell」なのだ。
私はこのときに「世を生き抜くヤツとはどんなヤツか」を、シミジミと考えさせられた。

私の周りには、「人生を…」とまでは言わないが、「ビジネス界を…」隆々と生き抜いている猛者達がいる。
彼らには何か1つ、人より長けた「特別な個性」が備わっているような気がしてならない。
それは「驚異の忍耐力」や「凄いアイデアマン」、「ズバ抜けた要領の良さ」や「ケタ違いの度胸」だったりする。
それは何でも良いのだが、とにかく何か1つ、人より図抜けた個性がその人の人生を大きく変えてしまうのは間違いないだろう。
今回は、私がまだ幼かった頃に「こいつはスゴい…」と、畏敬の眼差しを送った2人の友をご紹介しよう。

高校時代の英語の試験で、設問に「長文読解」があり、英語が苦手な私は、答案用紙を前に頭を抱えていた。
何とか知っている単語だけで、この長文の、おおよそのあらましだけでも分かればいいのだが、
そこに、見たこともない「shell」という単語がワンサカと登場していた。これがどんな意味なのかサッパリ分からないのだ。
何とか「sea」という単語が見つかったので「海」に関する文章ではないかと想像ができたのだがそこまでだった。
とうとうこの長文が読み解けぬままタイムアップ。長文の解答欄はまっ白のままだった。

数日後、答案用紙が返ってきたのだが、
その長文にあった「shell」が、皆も分からなかったようで、総じてクラスの平均点は低かった。
だがクラスの中に、たった1人、その長文を完璧に読み解いた男がいたのである。
彼は平素、成績は悪くない方だが、ガリ勉でもなく、コツコツやるタイプでもなく、英語もそんなに得意でもなかった気がする。
なので「え?何でアイツが…」と不思議に思ったことを覚えている。

先生はその彼に、「よく『shell』が分かったな。見たことのない一般名詞なのに」と言うと、彼は嬉しそうにこう応えた。
「この単語、どっかで見たことあるなぁ…と、ずーっと考えてて、あっ!と思い出したんです」
「この『shell』て、ガソリンスタンドですよね。そこに『貝殻のマーク』があったのを思い出したんです」と。
クラスメイトから「おーっ!」というどよめきが起こった。
そう。「shell」は「貝殻」だ。あの「シェル石油」の「shell」だったのだ。
この長文は、「貝殻」に耳を当て、潮騒に唄が聴こえるという「詩」だったのだ。

車を運転するようになった今の我々なら、「shell」という単語はすぐに「shell石油」の「貝殻」を連想できただろう。
だが16歳の、車の運転などしない高校生には、「shell」という単語は、実際、馴染みのある単語ではなかった。
見たこともない単語を出す先生もイジワルだが、大学入試では、そんなことはいっくらでもある。
何としてでも「shell」を、周りの文章から、これを「貝殻」だと連想できれば良かったのだが、この長文は特に難しかった。
だが、この「貝殻」を発見した男がいたのだ。
私は、ある違う観点からそれを「スゴい…」と鮮烈に感じたこと覚えている。40年以上経った今でもだ。

「shell」を「貝殻」だと思い出した彼は、自分の脳ミソの中にある、すべての記憶のページを順にめくっていったのだろう。
「どこかで見たかもしれない…」「どこかで聞いたかもしれない・・・」と。
彼がたどった記憶は、学校の授業や英語の参考書だけではない。日常生活のあらゆる記憶の粒を、ピンセットで数えていったのだろう。
そしてついに、父親に乗せられて行ったガソリンスタンドの、あの「shellの看板」に辿りついたのだ。

当時、我々にとっての「大学受験」は「人生の分岐点」にも等しかった。高校生なりの「命懸けの生存競争」と言ってもいい。
彼は、その「生存競争」において、極めてその「生存欲求能力」に優れた「生物」だったのだ。
「shell」の発見は、たまたまなんかではない。これは偶然の成果なんかではなかった気がするのだ。
彼は、独特の「生存本能」を持つ、「生き抜く術」を見つけられる人間だったはずだ。
これが「特別の個性」の正体である。

この男のようなタイプは、山で遭難をしても、1枚しかないチョコレートを手に、
「必ず助けが来る。それまで朝露を舐め、そしてこのチョコレートを少しずつ食べて…」と、生き抜いていくタイプだ。
このような「細い糸をたぐってでも生き抜く人間」は、社会に出てからも強い。とにかく強い。
学歴などで太刀打ちできるものではないのである。

私は、彼の「その後」を見届けようと思った。そして彼はやはり、現役で第1志望の国立大学に合格をする。
「こいつには勝てない」。私はシミジミと、シミジミとそう思ったことを覚えている。

さてもう1つ、さらに幼き小学生時代のエピソードをご紹介しよう。

どこの学校にでもあっただろうが、夏休みの宿題に「読書感想文」というのがある。
我々の学校は、4年から6年までの3年間は、おおよそ20冊ぐらいの「推薦図書」が生徒たちに知らされ、
3年間で、そのどれを読んで「感想文」を書いても構わないのだが、
私の級友で、4年から6年まで、まったく同じ「図書」の、まったく同じ「読書感想文」を提出し続けた少年がいた。
そう。4年のときに書いた「読書感想文」を、なんと3年間、内容をそのまま書き写し、そのまま提出したのだ。
100%、確信犯である。

私は「そんなことをして、バレたらどうする」と、オドオドしながら彼を問い詰めた。
だが彼は、「絶対バレない。先生は、去年の感想文なんて覚えてないって」と、自信ありげに答えるのだ。
そして実際、去年とまったく同じ「読書感想文」を提出し、そして、何のお咎めも受けることはなかった。
ちなみに5年~6年は担任は持ち上がりだ。担任は去年と同じ感想文を読まされているのだが、それにまったく気付いていない。

この仕業を高校生がするなら何の驚きもない。そんな悪ガキ高校生など、山ほどもいたはずだ。
だが彼は、たかが小学生なのだ。
そんな子供が「先生は去年の全部の感想文など覚えちゃいない」と決め込むあたり、普通の子ではない。
これは、「人間の記憶ほどいい加減なものはない」を見越した「大人の知能犯」の仕業である。

それにしても、何という「度胸」の持ち主だろう。
大人を怒らせたらどうなるか…と、ビクビクしていた私には、到底マネのできる仕業ではなかった。
実は、彼の逸話はこの一事だけではない。
とにかく彼は突飛な「アイデアマン」であり、極めて「合理的」であり、そしてとにかく並外れた「胆力」の持ち主だった。
私は幼心に、彼のこの「特別な個性」に、ただただ、羨望の眼差しを送っていたことを覚えている。
「こいつには勝てない」。本当にそう思った。

ちなみに彼のその後は、普通の中学と高校、そして普通の大学へと進み、そしてごくごく普通の企業に就職をしたのだが、
30歳を前にそこをスッパリと辞め、親の小さな工務店を継ぎ、そして今、そこをどんどんと大きくしている。
社員総勢120名を率いる彼の強気の言動は、今でもまったく変わっていない。勝負どころで、とにかくひるまないのだ。
彼がスイスイと、世の中を斜めに見ながら泳いでいるように見えるのは、あの昔のイメージが残っているからかもしれない。
「失敗したら死ねばいい」。彼はきっとそう思いながら生きているはずだ。

社会に出て、つくづく思うことがある。
世間の荒波を越えて行くには、どれだけ高学歴だろうが、どれだけ博学であろうが、そんなものは何の役にも立たない。
これまで、数多くの、中小企業の経営者や、大企業の経営陣にも出会ってきたのだが、
この連中の「成功の可否」は、要はこういった「特別な個性」を持っているのかどうかの一点だと思う。
ここで紹介したこの2人も、砂漠の真ん中で「水一滴で生き抜く術」を、生まれながらに備えている人物なのだろう。

長いビジネス人生の中では、「ここぞ正念場」という場面に出くわすことがある。
そこでいかに、「生き残る手段」を見つけ出せるか。
長いビジネス人生の中では、「ここぞ勝負のとき」という場面に出くわすことがある。
そこでいかに「腹をくくった胆力」を発揮できるか、だろう。

できれば新人を雇うとき、面接でこう聞きてみたい気がする。
「キミは『shell』という単語を知っているかい?」と。

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