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2008年9月号

vol. 018

目と目が合えばビジネスが生まれる

~同じ方向を目指すビジネスは競合となる。だから一人振り向けばいい~

毎年、夏の甲子園に高校野球を見に行くのだが、
ある時、とんでもなく不思議な光景に目を奪われた。
ここ甲子園で、なんと、野球を見ない不逞の集団を発見したのだ。

今夏、盛況に終わった北京オリンピックの影に隠れていたが、
甲子園も連日、満員の観衆を集めて盛り上がった。

真っ青な空に乾いた音を残し白球が飛ぶ。
アルプス応援団の歓声に、満員の観衆も立ち上がって高校球児を応援する。
そんな中、
5万人もの観客がダイヤモンドを凝視しているのに、
その反対を向いている集団がいた。
そう。お弁当やビールを売っている「売り子達」だ。
連中は野球を見ずに、観客の方を向いていたのだ。

その売り子達の姿は、
ごくごく見慣れた姿であり、気に留めてもいなかったにも関わらず、
ある時、その光景を見て息が止まった。
「これか…」と。

ダイヤモンドを背にしている彼らと必然的に目が合う。
それだけで彼らは察するのか、急いで階段を駆け上がってくる。
いかん、術中にはまっていると分かっていながら、
観客と目を合わそうとする彼等の目に射抜かれるのだ。
熱気に溢れる甲子園で飲むビールは美味過ぎるのだ。

さて、「週刊TVガイド」という雑誌をご存知だろう。
1962年に創刊されたテレビ情報誌の草分けだ。
だが創刊時、家庭のテレビはまだまだ普及し始めた頃で、
「こんな雑誌は売れない」とどこもライバルには立たなかった。
(角川書店のザ・テレビジョンの発刊まで20年間独走)

1962年当時、日本はテレビ産業の黎明期で、
多くの資本は「テレビ局」の開設にやっきになっていた。
テレビ局の認可を管轄する郵政省は、
5局しかなかった民放局を東京オリンピックまでに一気に34局も認可し、
日本中、大テレビ時代に突入する胎動の時代だった。

そんな中で、不思議な会社が現れた。
世の中、こぞってテレビ局を開設しようとしている最中、
「きっと多チャンネル時代がやって来る」と一人冷静に潮流を見据え、
テレビ情報誌を創刊した東京ニュース通信社である。

東京ニュース通信社は、戦後間もなく創業した小さなベンチャーだ。
この会社には、テレビキー局を興す体力などなかった、
と言えばそれまでだが、
何とも面白いビジネスを見つけたものである。
「週刊TVガイド」はテレビ情報誌の代名詞にもなり、誰もが知ることとなるが、
未だ多くの人が、
東京ニュース通信社という社名さえ知らないのではないだろうか。

多くの人が商売ネタに怒涛のごとく寄り集まってくる。
そんな中に、
その潮流には逆らわず、
その潮流に乗ってビジネスをやり始める連中が必ずいる。

ちなみに、
ビジネスを興す際、決して潮流には逆らってはならない。
テレビ時代が幕を明け、
映画産業が衰退していく中で、
映画の潮流を再び興そうとするのは、川の流れに逆らって泳ぐようなもので、
いつしか体力が尽き、溺れてしまうのだ。

かと言って、自分自身も川の流れとなり、
みんなが突撃していく川下に向かうビジネスは、
多くのライバル社との淘汰に身を置かなければならない。
34局もあったテレビ局は今、東京も大阪も5局だけとなった。
だが「週刊TVガイド」は生きている。
なぜだろう。

「週刊TVガイド」は川の流れに乗りつつも、
顔だけは川上に向けていたことに尽きる。
「週刊TVガイド」は、川の流れ自体を、ビジネス源としたのである。
周りを見渡して欲しい。
こういった発想から始まった有名企業は実は少なくない。
チケットぴあ、オートバックス、帝国データバンクなどなどだ。

これは、高校野球観戦に集まった5万もの観衆に、
ビールを売る甲子園の売り子達そのものである。

新しいビジネスのヒントはここにある。
溢れんばかりに集まってきた多くの人と目を合わすビジネス。
これこそがベンチャーの真髄なのかもしれない。

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 社長 谷洋の独り言ブログ 日々是好日