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2014年6月号

vol. 087

ツービートダブルクロスオーバーで泳ぐ魚

~速く泳ぐためには魚になるのが一番である。理屈なんかじゃない。体で覚えろ~

ご存知だろうか。オリンピックの競泳種目で、
日本の女子選手で初めて自由形の金メダルを獲得した柴田亜衣は、
実は「魚」なのである。

ツービートダブルクロスオーバーというクロール泳法がある。
詳しい説明はここでは省くが、
オリンピックに出る選手で、この泳ぎをするものは一人もいない。
簡単に言えば「素人の泳ぎ方」らしい。

だが、他のオリンピック選手が取り入れるメジャ-な泳法は、
「私には合わない」と柴田は言う。
柴田をコーチした鹿屋大学の田中監督は、
「じゃあ我流でいい。要は魚になればいいんだから」と言い切る。

「魚になればいい」
実はこの言葉、私が好んでよく使うフレーズなのだ。
田中監督のこの言葉を初めて聞いたとき、
「おお一緒だ」と喜んだ。
そう。魚になれば、泳ぎ方なんて、何だって構わないのだ。

柴田の泳ぎは、猛練習によって進化させた独自のスタイルだ。
通常の泳法よりもキック数の少ないこのツービートダブルクロスオーバーは、
スポーツ科学面から見ても、お勧めの泳法ではないようだ。

だが柴田は、この泳法を極めていくことによって、
手のかく回数は2割もアップし、
大きなキックの間に小さな独特の小キックが自然と生じるようにもなった。
体が自然に、より早い泳ぎを探り出していったようだ。
これまさに「進化」ではないか。

柴田の練習量は、他のオリンピック選手とは比較にならないほど多い。
50mを息継ぎなしで泳ぐ持久力を身に付け、
休憩ナシで8kmから10kmを泳ぐ、ズバ抜けた長距離練習をこなすのである。
これは並の選手ならとっくに潰れている練習量らしい。
泳法の不利を「魚になるしかない」という一言でハネのけたのだ。

魚は四六時中泳いでいる。当たり前だ。
空気よりも抵抗の大きな水中を、より速く進めるよう、
高効率の泳法を身につけ、体を流線型に変え、抵抗のない表皮をまとい、
何万年をもかけて進化し、会得したすべての要素を遺伝子で伝えていく。

田中監督は柴田に、休憩中も「水の中にいろ」と命じる。
「そうすればきっと速くなる」と言ったそうだ。
たった数年で進化などするハズもないのだが、
それでも「魚になるべし」が、田中監督の金料玉条となった。

柴田はそれを己の信条とし、
そしてついにアテネ五輪で金メダルを掴み取るのである。
それは、田中監督が「柴田の選手生命を短くしたかも」と振り返るほど、
過酷な練習の成果が結実した瞬間でもあった。

私も最近、若い人に「魚になれ」と言うことが多くなってきた。
要するに、苦手なことの克服も、伸ばして行きたい力も、
理屈ではなく、天性ではなく、好き嫌いではなく、向き不向きではなく、
要は、魚になればいい、のである。
仕事に悩む若い人に、私はいつもこうアドバイスする。

先日私は、電車の中で、ある驚くべき光景を目にした。
始発駅で、発車を待っているとき、
次々と「吊り広告」を交換している若い職人を見たのだ。
カギ棒のような1本の道具で、目にも留まらぬ速さで広告を換えていく。
わずかなズレも傾きもない。
あっと言う間に次の車両に移って行った。
熟練の技、惚れ惚れと見とれてしまった。

近年、単純な仕事を一段グレードの低い仕事だと見る風潮があるが、
そうではない。
ドイツのギルド、日本の匠とまではいかないが、
それはまさに「魚の技」であり、
毎日、毎日、毎日、繰り返すことによって身についた魚の泳ぎが、
見事に熟練の泳法を作り上げていくのである。

単純作業は、その多くが機械に置き換わってもいくだろう。
数年後には、この電車の吊り広告も、機械がやってしまっているだろうが、
創造力を発揮しなければならない職業が増える中、
魚になって花開く職業も、無くなりなどしないのだ。

世田谷区をスイスイと走らせるタクシーの運転手もそうだ。
駅の売店の女性は、何がどこに、それがいくらかを隅々まで知っている。
新幹線の車内をたった7分で掃除する軍団がある。
同時通訳のプロ達は「経験のみが教本」と言い切る。
スーパーの裏側で何百尾もの魚をさばく主婦はパートなんかじゃない。
そう。彼らは皆、魚なのである。

「サラリーマンはプロじゃない」と言った人がいた。
経理に所属し、財務のエキスパートになったかに見えたが、
ある日、人事部に配置転換されてしまう。
異動、転勤、昇格や降格、部の統廃合なんていう仕組みがあるもんだから、
サラリーマンはいつまで経っても魚になれない。

理屈なんかじゃない。
とにかく、毎日、毎日、毎日、毎日、泳ぐ。
さすれば、どんなスイマーも「魚になれる」と言う。
もし今、あなたが若く、そして仕事について悩んでいるのなら、
「魚になる」のも悪くない。
魚の多い会社は、お客様をうならせる会社である。

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 社長 谷洋の独り言ブログ